次の企業バランスシートには、自然を計上する必要があるかもしれない

飲料会社は水を必要とし、食品会社は土壌と花粉媒介に依存する。半導体会社には安定した水源と広大な土地設備が必要であり、金融機関の融資は農業・鉱業・建設・エネルギーに向かうこともある。企業は工場やブランド、資金だけを管理しているように見えて、実際にはあらゆる事業が自然のシステムの上に立っている。

これまで、自然はしばしば無料の背景として扱われてきた。森林、河川、土壌、生物多様性はバランスシートに記載されないが、それらを失えば、コスト、生産量、保険、資産価値に現実として跳ね返ってくる。

国際的なサステナビリティの論点は「炭素」から「自然」へと移りつつある

2025年2月、国連「生物多様性条約」COP16の再開会合がローマで終了し、各国は生物多様性の資金、計画とモニタリング、グローバル指標について合意に達した。これにより、2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組にはより整った追跡の手段が備わった。

同じ時期、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)も、企業が自然への依存、影響、リスク、機会を特定するよう促している。その枠組みも同様に、ガバナンス、戦略、リスクと影響の管理、指標と目標という4つの柱を用いる。2025年、ISSBは自然関連基準の作業を進めることを決定し、自然関連リスクが主流の財務情報開示へ徐々に組み込まれつつあることを示した。

植樹は生物多様性のすべてではない

企業が自然を語るとき、最もよくある行動は植樹である。しかし本数を早く積み上げるために、適さない場所に単一の樹種を植え、あるいは元からあった草地や湿地を壊してしまえば、かえって生態系を傷つけることもある。

生物多様性は「生物がどれだけいるか」だけではなく、種、遺伝子、生態系のあいだの関係も含む。自然の保護はイベントの数を数えるだけでは足りず、企業がどこで事業を営み、どの資源を取り、どんな汚染を排出し、土地と水をどう変えているのかに立ち返る必要がある。

企業にとって最初の一歩は、ただちに「ネイチャーポジティブ」を宣言することではなく、まず依存関係の地図を描くことだ。どの拠点が水不足の地域にあるのか。どの原料が森林や生物多様性の高い地域から来ているのか。サプライチェーンは生息地の破壊に関わっていないか。

自然は一人ひとりの生活にも関わる

消費者が一杯のコーヒー、一枚の服、一皿の海産物を選ぶことは、いずれも土地、水、そして生物種につながっている。しかし個人が包装に書かれた「環境にやさしい」という一言だけで判断するのは難しい。だからこそ、政府がルールを整え、企業が追跡可能な情報を提供し、メディアと市民社会が検証を続ける必要がある。

ビジョン協会が言う「共存」とは、自然を人間から遠く離れた保護区に置くことではなく、私たちの健康、仕事、経済が、もともと自然の中にあることを認めることである。

企業が自然をリスクとして計上し始めたのは、自然が突然価値を持ったからではない。それが決して無料ではなかったことを、私たちがようやく認めたということだ。

参考資料

  • 国連「生物多様性条約」(CBD)、COP16ローマ再開会合の成果、2025年2月27日。

  • Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)、TNFD Recommendations および 2025 Status Report。